米国のバイデン大統領は9日に英国に到着し、大統領就任後で初の外遊を開始した。8日間の訪欧中、バイデン氏はG7サミットとNATO首脳会議に出席し、かつスイスでロシアのプーチン大統領と会談する。

バイデン氏の今回の外遊は、過去4年間で大きく損なわれた米国と欧州の関係修復を目的としていると見る向きが強い。しかし大西洋両岸では気まずい厄介な出来事が絶えず、関係修復は難航しそうだ。

欧州の懸念

バイデン氏は出発前に記者団に向け、今回の外遊は「欧州と米国の緊密な関係」をアピールすると述べていた。

ところが最近発覚したスパイ問題は、今回の外遊を決まりの悪いものにした。デンマークメディアの報道によると、米国はかつてデンマークの情報機関の協力を受け、ドイツのメルケル首相を含む欧州の政府要人を対象にスパイ活動を行っていた。独ベルリン紙は、本件は欧州諸国に衝撃を与え、バイデン氏の欧州歴訪に暗い影を落としたと指摘した。

トランプ前大統領の任期中、米国は「パリ協定」及びイラン核合意から離脱した。欧州の同盟国に軍事費拡大の圧力をかけ、EU産の鉄鋼及びアルミニウム製品に追加関税をかけた。これら一連の行動により、双方の政治・経済・安全などの溝が深まった。バイデン政権は発足後、同盟国の重要性の強調を続け、同盟国への安全の約束を繰り返している。さらに各分野で欧州に友好の手を伸ばし、米国と欧州の低迷する関係の改善を試みている。

従来の方針に回帰した米国に対して、欧州諸国の指導者は「熱心だが警戒」という態度を示している。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は9日の記事の中で、バイデン氏は「米国の回帰」の主張に力を入れているが、欧州諸国の指導者は米国の向かう先を確定できず、米国内の激しい政治論争に注目していると指摘した。また、トランプ氏の米共和党への影響力が弱まっていないことにも注意していると伝えた。

米シンクタンク、大西洋評議会ブレント・スコウクロフト国際安全保障研究センターの責任者であるバリー・パベル氏は、「欧州諸国は米共和党の現状を理解しており、今年1月6日に米議会で発生した暴動を目にした。彼らは米国が2024年にどのような大統領を選出するかを知らない」と指摘した。

中国国際問題研究院米国研究所の研究員補佐の張騰軍氏は、「バイデン政権は現在、主に国内の感染対策、経済回復、党の対立、人種差別などの問題に取り組まなければならない。これを背景とし、バイデン政権の同盟国へのさまざまな約束は口先だけに留まる可能性が高い。これも欧州側が米国に懸念を抱く一つの原因だ」との見方を示した。

利益の食い違い

利益の食い違い

信頼の危機のほか、米国と欧州の経済貿易及び大国関係などの面にも実質的な食い違いがある。これらの「厄介事」を容易に解消できるはずがない。

米国は過去数年、国家安全を理由にEUやその他の国に鉄鋼及びアルミニウムの追加関税をかけた。欧州諸国は米国のテック大手にデジタルサービス税をかけた。双方はこれをめぐり争い続けている。一部の米メディアの報道によると、米国とEUの指導者は、来週ベルギーのブリュッセルで開かれる会議での貿易紛争の終了を目指している。これには航空機補助金の紛争、米国による鉄鋼及びアルミニウムの追加関税、EUのそれに対する報復措置などが含まれる。

しかし双方が交渉のテーブルで大きく前進できるかは未知数だ。米ニュースサイト「ポリティコ」は記事の中で、「EUと米国の協力再開が一挙に成し遂げられることはない。米当局者はよく欧州諸国が独占禁止調査及び監督管理の面で米テック企業を不公平に扱っていると批判する。一部の欧州諸国は米国のせいで中国との重要な経済貿易関係が破壊されることを望まない」と指摘した。

米国は同盟国を抱き込みロシアや中国などに共同で圧力をかけようとしているが、欧州では「共鳴」が生じていないとの分析もある。ミュンヘン安全保障会議の主催者側が9日に発表した年間安全報告書は、「世界は目下、新型コロナウイルスとの戦い、気候変動への対応、軍備抑制などの議題で多国間協力を必要としている。西側諸国とロシア・中国などの国は、競争と協力を切り離してはならない」とした。あるEUのベテラン外交官はメディアに、「我々と米国は100%団結しているわけではない。これが現実だ」と述べた。

独シンクタンク・ベルテルスマン財団と米シンクタンク・ジャーマンマーシャル財団がこのほど共同発表した世論調査によると、米国の前政権の不十分な感染対策により、欧州でその「世界のリーダー」としての評判が落ちているが、バイデン氏の就任後も回復は見られない。一部で期待されている「バイデン効果」が生じていない。

ミュンヘン安全保障会議の報告書は、米国の戦略の重心はすでにアジア太平洋に移動しており、米国は欧州から徐々に身を引いていると指摘した。ミュンヘン安全保証会議のヴォルフガング・イッシンガー議長は、米国に安全保護を求める時代はすでに過去と化しており、欧州は自身の戦略的位置づけを見直す必要があると判断した。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年6月11日